ボールパイソンの繁殖の基本の流れを知りたい方へ
ペットスネークの中で、世界中で最も愛好家が多いと言われるボールパイソン。
可愛げのある表情や体型はもちろん、たくさんのモルフ(品種)があることが人気に火をつけています。
色や模様に特徴があるモルフをもったボールパイソンかけ合わせていくと、親が持つ表現が子に引き継がれたり、親とは違った変化を見せたりと、無数に表情を変えていくのが面白いところ。
この記事では、ボールパイソンライフを100倍面白くする繁殖についてお伝えしていきます。
※注意 ボールパイソンの繁殖に関しては、人それぞれ、さまざまな意見があります。
この記事は絶対的なものではありません。deu-reptilesからの一見解として受け止めていただければと思います。
繁殖の流れを動画で解説↓
基本的な大まかな流れを動画にて解説いたしましたので、初心者の方はまずこちらの動画をご覧ください。
ボールパイソンの繁殖の生態
ボールパイソンは卵生で一度に4-10個程度の卵を産みます。
交尾の時期は一般的に冬で、2ヶ月程度の妊娠ののちに産卵。
その後は25-28℃で3ヶ月、30℃の環境下では2ヶ月ほどで孵化(ハッチ)します。
ボールパイソンの性成熟
性成熟はオスとメスで違いがあり、オスだと、700g程度で盛りだし、交尾をはじめます。
ただし、小さめ個体は精子量が少なく、指切り(交尾)をしても無精卵が産まれる確率が高まるので要注意。
オスはサイズを上げすぎると盛りにくくなるという意見がある一方、逆に精子量が多くなるので有利になるという意見もあります。
メスだと1500gくらいは必要で、2000g以上ある子だと安心です。
身体が大きければ大きいほど産卵はスムーズに、産まれてくる卵も大きくなり、個数も増えていきます。
月齢でいうと、オスだと1年と少し、メスでは2年以上は最低でも必要です。
ボールパイソンをお迎えするときに、一匹目にはメスをオススメする理由がここにあります。
オスは後からでも間に合いますが、まずメスの受け入れ体制が整わなければ繁殖はできません。
成長には時間がかかるため、時間軸を見た繁殖プランを立てていくことが大切なポイントの一つになります。
繁殖の流れ
では実際、繁殖には具体的にどのように取り組むのがよいでしょうか。
流れは以下の通り。
ボールパイソンの繁殖の流れ
それぞれの段階で取り組む必要があることを、ポイントを絞ってお伝えしていきます。
ちょっと長いけどな。本気なら最後まで読めよ。 ヘビ助
交尾の前準備
親となる生体を育てる
繁殖のためには、繁殖に適した大きさまでボールパイソンを育てていく必要があります。
ボールパイソンの繁殖体重目安
ここでポイントになるのが給餌です。
ボールパイソンの成長には、餌の頻度や大きさといった内容が、色濃く影響を与えていきます。
ボールパイソンの餌には大きく分けてマウスとラットがありますが、栄養価や吸収エネルギー、成長スピードの比較から考えると、ラットがオススメ。
実際、欧米を中心とした海外のブリーダーの多くが、ラットを与えています。
常時200匹を越えるボールパイソンを扱っている当店でも、マウスを与えている個体と、ラットを食べる個体の成長スピードには大きな違いを感じています。
ここでしっかりと準備ができていないと、最悪繁殖の流れの中でボールパイソンの体力が持たずに生き絶えてしまうこともあるので要注意。
交尾前から産卵に向かう期間では、餌を与えない方が良かったり、食いつかなかったりする期間が発生するため、事前にしっかりと栄養を蓄えておくことが重要です。
発情のメカニズム
赤道にほど近いアフリカ西部から中部が原産のボールパイソンですが、野生下では11-2月が交尾の最盛期になります。
飼育下においては、一年中交尾は可能なのですが、気候が違う日本や欧米でも、冬時期にオスとメスをかけていくのが一般的で確率があがるといわれています。
ここら辺のメカニズムはよくはわかっていませんが、特別な事情がなければ冬時期にかけるのが無難。
別のシーズンにチャレンジすることもOKと覚えておくといいでしょう。
原産地には四季はなく、雨季と乾季で一年が巡っていきます。
そのため雨季の間に栄養を蓄えて、乾季の間には拒食をするということが本能的に染み付いている模様。
餌が減る乾季には代謝を落として、その季節を乗り越えられるようにしているのでしょう。
ボールパイソンは餌が少なくなったり、気温が下がると、生存本能が刺激されて、発情しやすくなるといわれています。
クーリング
発情のメカニズムを利用して、疑似的に温度差をつけることによって、繁殖の時期が来たと錯覚させ発情を促す試みを、クーリングと呼びます。
寒い!死ぬかも!子ども作っておこうかな。 ヘビ助
クーリングは基本的にはオスに対して行うことが一般的です。
オスの準備
クーリングの際は、一気に温度を下げ、餌を抜くのではなく、段階的に調整していくことで生体の負担を下げることができます。
餌は、サイズを少しずつ小さくし、給餌間隔も少しずつ広げていきながら、最終的に絶食させます。
温度に関しては、1週間ごとに1度といった具合で下げていき、最終的に24-5°まで落とします。
夜間は冷えすぎることに注意をしつつ、パネルヒーターをオフに、昼間はヒーターをオンにし全体を27℃ほどに保つようにします。
12月頃に、最終的な温度になるようにしていくスケジュールで移行される方が多いようです。
メスの準備
メスは繁殖の際に、体力と栄養を必要とするために、食い溜めさせていくことが重要です。
餌の間隔を狭めて、食べるだけ食べてもらいましょう。
ボールパイソンの交尾はオスのやる気にかかっている側面が大きいため、体調を崩す可能性が高まるクーリングはあまり行われません。
ただし、飼育温度が高くなりすぎると、精子が死んでしまったり、卵が吸収されてしまうことが多くなるので、交尾から産卵の期間は、通常よりも温度を下げ、ケージ内の28-30°程度に保つようにしましょう。
クーリングの注意点
クーリングは生体に対して負担をかける側面があるため、採用しないブリーダーも多くいます。 クーリングの際に体調が悪化した場合は、いつも通りに環境に戻してあげることをオススメします。 冬場は乾燥しやすいので、特に呼吸器系の疾患に気をつけましょう。
どのような温度にするかも、人によってかなりの幅があるので、その上で取り組んでいただければと思います。
温度が下がることにより免疫も低下していくので、肺炎で命を落としたりする個体が出ないよう、ケージ内の清潔はできる限り保つようにするといいでしょう。
クーリングを行う際には、クーリングをする生体としない生体を分け、温度を調整するようにしていきます。
(例:クローゼットの中や温室以外の場所など)
くれぐれも温度の下がりすぎには注意が必要です!
暖突やサーモ等をうまく使って、ケージ内をコントロールしていきましょう。
交尾の流れ
交尾をさせる時には オスメス同じケージ内に入れる必要があります。
どちらのケージに入れたほうが良いかについては諸説あるのですが、当店ではメスのケージにオスを入れています。
その際、メスの脱皮殻がケージ内に残っていると、匂いに刺激されて、オスの発情が促されることもあるんだとか。
オスとメスを同居させてしばらくすると、尻尾をふりふりしたり尿を撒き散らかすなどといった発情行動がメスに見られることも。
しかしメスが発情したところで、オスがやる気にならない限り交尾は成立しません、、、
まあ結局は、男のやる気次第だと思うぞ。 ヘビ助
交尾の際は、餌は完全に抜くようにします。
3日程度入れて、交尾の兆候(素股状態)が見られる場合は、さらに3日程度入れるようにします。
あまり長い間同居させておくとお互いに対する興味を失っていくことがあるようなので、3日入れて、3日抜くといったサイクルを繰り返すのが効果的です。
いつも一緒より、たまに会うくらいの方がドキドキすんだよな。 ヘビ助
さからない場合、さらにクーリングを加速させるといった選択肢をとる人もいます。
クーリングのやり方やどこまで温度を下げるかなどは人それぞれですので、色々試しつつ、自分の考えに合ったクーリングの方法を模索していくようにしましょう。
オスは1シーズンに複数のメスとかけることも可能です。
3-5匹のメスとかけるブリーダーもいます。
ただし、かけ過ぎると消耗が激しく落ちて(死んで)しまうこともあるのでほとほどにしましょう。
交尾の成立
ボールパイソンの交尾は、オスの尻尾がメスの尻尾を下から上に巻き込む形で行われることがほとんどです。
交尾の状態が指切りげんまんをしている形に似ていることから、一般的に”指切り”と呼ばれます。
指切りを視認した際、尻尾を軽く持ち上げて、本当にかかっているかを確認する人もいます。
指切りは多くの場合、オスが蹴爪でメスの総排泄口を刺激して行われます。
指切りを何度か確認していると、排卵前脱皮が行われることも。
この脱皮期間が最も交尾しやすいと言われています。
メスの瞳や身体が白濁している時はチャンス!
ここから排卵がきて回転姿勢をするまでの期間、体がすっぽり入るくらいの大きさの水入れを入れてあげるとよいでしょう。 温度が高過ぎる環境だと精子が死ぬ可能性がある為、温度調節に加えてこのような工夫をしていくと、より受精率があがります。
排卵から産卵まで
排卵
この後、約30-40日程度で排卵が見られます。
(卵胞がしっかり発育すると卵巣から卵子が出てきて、精子と受精をする準備をします)
排卵は大きなサイズの餌を飲んだ時のように、メスの体(肺の少し下くらい)がぽこっと膨らみます。
この膨らむ現象が視認できるのは約12時間程度と言われており期間限定の視認できるイベントです。
生体の様子を毎日確認するようにしましょう!
回転姿勢
排卵が見られて2週間ほどすると、回転姿勢というお腹を上にしてぐるんとした体勢をとります。
なんだか苦しそうな感じ。
この姿勢が受精した証拠のようなものです。
当店では排卵や回転姿勢が見られない場合、オスを再度入れて交尾が行われるようにチャレンジを繰り返します。
卵をとるために、できる努力を重ねていくことで確率を高めていきます。
排卵や回転姿勢が見られた場合には、メスの餌を完全にストップします。
卵が体内にあるときに、餌を食べると、卵が餌によって圧迫され形成不全を引き起こしてしまう可能性があるためです。
最終脱皮
回転姿勢から約1ヶ月程で産卵前最後の脱皮をします。
ボールパイソンの排卵から産卵までの流れは、あくまで一般的な場合です。 排卵後、7日ほどで産卵を迎えるケースが報告されることもあり、個体によって様々なパターンが存在します。
産卵後の流れ
産卵
最終脱皮から約1ヶ月程で、産卵します。
卵の成長スピードには、母体ごとに個体差があります。
大切なのは、母体の健康状態。
快適に過ごせるように、ケージをメンテナンスしつつ、優しく見守ってあげましょう。
基本的には夕方〜朝方にかけて産卵が行われます。
ボールパイソンの産卵の平均個数は7個と言われています
母体が大きければ大きいほど、数も多く、卵も大きくなり、健康な子が生まれる可能性が高まります。
採卵
無事に産卵を終えたら、卵を回収しましょう。
ナチュラルハッチ(自然孵化)をさせる方もいますが、回収をした方が孵化率が高まり、産卵でエネルギーを失った母親のリスクを下げることができます。
産卵後のママパイソンはかなり痩せているので、早めに立ち上げるようにしてあげましょう。
出産後のママパイソンは、気が立っていることが多いので、頭にキッチンペーパーや新聞紙をふわっとかぶせて、落ち着かせてから回収します。
回収の際、最も注意すべきなのが卵の向きを絶対に変えないことです。
爬虫類は基本的に胚の位置が決まっていて、その向きが変わってしまうと孵化率が下がります。
そのため、回収前にマジックなどで上に線を書いたり、No.を書いたりするのが一般的です。
当店ではよくアンパンマンなどを描きます。可愛い方が中の赤ちゃんも嬉しいはず…
卵の管理
卵は剥がして1個ずつ並べる
ボールパイソンの卵は、多くの場合卵塊になって出てきます。
産卵後早めに回収をすると、くっついている卵塊が剥がしやすいのですが、時間が経過すると固着し剥がれにくくなります。
必ずしも剥がさないといけないわけではありませんが剥がして一個ずつ並べるのが一般的です。
その際、他の卵がダメージを受けないように、別々にするとより安心です。
有精卵か無精卵かを判別し、無精卵を取り除く
卵を回収したら、有精卵か無精卵かを判断します。
スラッグ(無精卵)は、見た目が茶色く普通の卵より小さいというのが、よく見られる特徴です。
しかし一見スラッグでも、実際には生きていて普通に生まれることもあるので、しっかり有精卵と無精卵をキャドリング(判別作業)をして確かめることが大事です。
キャドリングは一般的にライトを使用して行います。
部屋を暗くして卵にライトを当てます。(明るめのLEDライトがおすすめ)
有精卵の場合は血管が見られます。血管が少しでもあれば有精卵です。しっかり見ましょう。
血管が薄くても問題ありません。管理がしっかりしていれば、時間ととも血管も太くはっきり見えるようになります。
以前、当店のスタッフのひとりが「スラッグってどんな味すんだろ?」とスラッグの中身を舐めていました。
味は「食べられなくはない!火を通せばいける」とのこと。
あまり美味しくはないということですね。よければチャレンジしてみてください。
ママパイソンの立ち上げ
産卵を終えたママパイソンは、エネルギーを使って痩せ細っているはず。
まずはありがとうとママパイソンに伝えましょう、
「ママ、ありがとう」
産卵後、そのままにしていると、ママモード全開、警戒心ましましで、餌をあげても食いつかないことが多いです。
ママパイソンは温浴をし、ケージは丸洗いして、匂いをリセットするようにしましょう。
卵の保管方法
回収した卵は、温度と湿度を適正に保って保管する必要があります。
保管状態が悪いと、死籠りしてしまったり、奇形の原因になったりしてしまうこともあるので、ここも慎重にいきましょう。
当店では、Daisoのシューズボックスにパーライトとイージーハッチトレイ、ラップを使って保管しています。
まずシューズボックスに1-2cmほどパーライトを敷き、ひたひたになるまで水を注ぎます。
水分が干渉しないように注意しながら、イージーハッチトレイを置きます。
イージーハッチトレイは、ボールパイソンの卵の保管専用のアイテムです(写真などはりはり)
そこに回収した卵を並べていきます。
どの父親、母親から産まれた卵なのかがわかるように、回収日をメモしておくようにしましょう。
(例:パステルバナナ×GHI 最高パステルバナナGHI 回収日◯/◯)
温度と湿度を正確にチェックできるように、温湿度計を入れ、ラップを貼り、シューズボックスの蓋を被せます。
湿度は95〜99%、温度は30〜32℃になるように調節しましょう。
ボールパイソンの卵は大体30〜32℃管理で60日頃に孵化(ハッチ)します。
ちなみに当店では、50日でハッチした個体も。
33℃以上での高温管理は奇形になりやすいといったリスクがあるので、注意して温度管理をしましょう。
孵化(ハッチ)後の流れ
孵化(ハッチ)
長いようで短い、短いようで長い2ヶ月。
ハッチ日が近づくにつれ卵は凹んでいくことが多いですが、湿度がしっかり管理されていれば問題はありません。
卵から完全に生まれる直前に、頭だけをヒョコッと出す光景を見ることができることも。
体を全部出してない時はヨークサックと言われる臍の緒から栄養を吸収している途中です。
自然と出て来るのを待つようにしましょう。
エッグカットはしてもしなくてもOK。
うちでは、1匹頭が出てきたあたりでカットしてみることが多いでしょうか。
出て来るペースにも個体差がありますが、暖かくて見守ってあげてください。
ハッチ後の赤ちゃんボールパイソン の管理
卵から完全に出てきたボールパイソン は、高めの湿度環境で管理してあげましょう。
清潔なケージにキッチンペーパーやペットシーツを敷き、霧吹きなどで水分を含ませます。
この段階では、安心感を与えるためか複数匹を一緒のケージに入れておく人が多い印象。
ボールパイソン は最初の脱皮と給餌を終えると一安心できます。
ハッチから大体半月程度で最初の脱皮(ファーストシェッド)をします。
ファーストシェッドが終わったら、1匹ずつケージを分けて管理をするようにしましょう。
ファーストシェッドまでは、お腹に残っている栄養を吸収しているため、餌は不要です。
初給餌
ファーストシェッドが済んだら、餌を与えてみましょう。
最初から自発的に食べてくれる個体は少ないので、飛んでこない子には活餌やアシスト給餌で餌を覚えさせてあげましょう。
アシスト給餌は口元に餌を押し付け食べさせるやり方です。
アシストの際は、自発で食べれる大きさよりも少し小さめに、赤ちゃんボールパイソン にはピンクマウスをあげます。
アシストに慣れると口元に近づけるだけでハムっと食いつくようになり、次第に飛んできてくれるようにもなっていきます。
自発的に食べ始めるタイミングには個体差がありますが、優しく愛を持って給餌をしてあげましょう。
まとめ
見ているだけ、飼育しているだけでも魅力的なボールパイソンの世界 。
しかし、繁殖が成功した時の感動は格別です。
ぜひ、チャレンジしてみてください。
ここでは繁殖の流れを説明しましたが、モルフ同士をどう掛け合わせるかによって、無数に広がっていく表現の変化も魅力的なところですよね。
モルフ同士の掛け合わせについても、また、記事を書きますので楽しみにしていてください。
YouTubeではボールパイソンの飼育やモルフ(品種)紹介をしています
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